黒づくめが折り畳み式の三脚をバックから取り出し、手慣れた手つきで一眼レフを取り付ける。
あの、大きなバックには何が入っているんだろうなと気にはなっていたのだが、そういうことか。
そしてカメラの設定をなにやら確認しながら声をかけてきた
「タイマーを設定するので皆さん紅葉をバックに適当に集まって並んでください。」
チビ女は、当然でしょと言わんばかりに前列のど真ん中に素早く移動。
たまたま僕が前列の位置にいたので、チビ女が右側にいる形だ。チビ女のさらに右側にギャルが続く。残りの5人は後列で、僕とギャルは後ろが見えなくなるので中腰となる。タイマーはあと5秒だ、5秒でポーズを考えなければまらない。チビ女はピース、ギャルは手をパーの形で頭のほうに、後列は知らん。どうしよう、どんな風にしよう、タイマーがくる!
パシャリとシャッター音が紅葉の中に響く。
とっさに笑顔とグーに親指を立てる、いわゆるグッジョブの形となっていた。まあとっさの判断としては上出来だったであろう。
すばはくカメラを撮りにいった黒づくめが戻ってきてカメラのモニタで今しがた撮れたものを見せてくれる。
一同、わっとなる。あまりにも背景の紅葉が綺麗だったからだ。
自然の紅というものは、こうも美しいものなのだろうか、ずっとこの写真を見続けていたいほどだ。
「すっごい綺麗、これって普通に目でみた景色より綺麗なんだけど」
オバサンが関心している。
「ああ、これは光の焦点を背景も含め全体的に吸収する設定にしたのですよ、ちなみに今回の逆が背景の前にいる人間に焦点をあわせて背景のぼかす方法、よく人を撮るときにそうします。」黒づくめは大分カメラに詳しいようだ、もしかしてカメラマン仕事のしているかもしれない。
と思ったそのとき、デブが口を開く「直政さんって、カメラマンの方ですか?」「いえ、カメラは趣味程度です。仕事のほうははIT系の仕事をしています」
ほう、IT系とは以外だ、もっともアイティーと一口にいっても色々あるが、あまり詳しいいことまは話そうとはしない、しかも謙虚な物の言い方だ、もともと寡黙な男ってのもあるけど。
どうりでタブレットの扱いにも慣れているわけだ。