一同、まっすぐと展望台から確認した紅葉の木へと向かっている。これ以上ないぐらい紅葉の木に向かって一直線だ。皆の気持ちはお互いに分かっている、今まで歩いてきてだいぶ体力を消耗しているので、さっさと着きたいのである。
紅葉の木に近づくにつれて、生えている木の割合が増えてくる。ここぞチャンスとばかりに百合さんが口を開く。
「皆さーん、周りを見てください、豊かな緑ですねー。緑には気持ちを癒す力があるそうですよ。森林浴っていいますよねー」
皆の疲れた気分を察してか元気づけようとしてくれている。ギャルもそれにのる。
「じゃあ今はウォーキングと森林浴を兼ねているって訳だ。一石二鳥じゃーん」
そこへチビ女が、するどい突っ込みをはなつ。
「森林浴って、座ったり寝ころんだりして、まったりした状態でするもんじゃないのー?」
「あら、歩きながらでも、森林浴のうちに入るのでなくて?」
すかさずオバサンがフォローする。
別にどっちでも良いが、女子達の口数が増えているような気が。腹が減っている気を紛らわすためだろうか。
さらに進むにつれ葉っぱやら樹木やらが、どんどんと視界に増えている。と同時に道の険しさもます。
そのときデブが本音をはなった。
「腹へったー」
「そうですね、帰りに駅前のファミレスよりでもましょうか、コンビニでのパンフレットのコピーもありますし。」
このあと、皆で食事かそれも悪くはない。
落ち葉を踏む音が、ぱりぱりと鳴っていく。聞きごこちのよい音だ。自然の恵みのメロディーといったところだろうか。
もう紅葉の木も近いであろう。